停留精巣

停留精巣とは?

 精巣(睾丸)は、本来は陰嚢の中に固定されているものなのですが、そうでない場合を停留精巣と呼びます。
 胎児において、精巣は妊娠1~2か月で胎児の腹腔内で、腎臓の高さに発生し、妊娠7か月頃には陰嚢に下降して固定されます。

精巣の下降が不十分な場合、精巣が陰嚢に固定されず、停留精巣となります。
 停留精巣が発見されるのが、生後の健診の時が多いようです。

健診を担当した小児科医から指摘され、泌尿器科医に紹介され診断されることになります。

停留精巣の種類

1) 触知精巣
陰嚢内には精巣を触知しないが、ソケイ部に触知する場合です。

精巣は用手的には下降できず、発育障害を来していることがよくあります。
陰嚢内には精巣が触れなくても、ソケイ部に立派な精巣を触れ、十分に陰嚢まで下降する場合や、入浴後に陰嚢の緊張がとれた状態で精巣が陰嚢に下降する場合は遊走精巣と呼びます。
 遊走精巣は一旦陰嚢に下降した精巣が、精巣挙筋の収縮によりソケイ部に遊走したものと考えられます。
2) 非触知精巣
触診でソケイ部に精巣を触れない場合です。

手術でソケイ管を切開すると露出する場合が多いです。
それでも精巣が見当たらない場合は腹腔内に存在している可能性があります。
理論的には腎臓の高さまで探す必要があります。
そこに精巣が発見されれば腹腔内精巣と呼ばれます。
まれに精管が発見されたにもかかわらず、その先端に精巣が欠損していたり、遺残物が付着している場合があります。

これは一旦、胎児の時に発育した精巣が、捻転をおこし、血流不良となり退縮したと考えられます。
これを消失精巣と呼びます。

停留精巣の治療

 ソケイ部や腹腔内に停留している精巣が認められる場合は、精巣を陰嚢まで下降させ陰嚢に固定します(精巣固定術)。
精巣に連なる血管が十分な長さが確保される場合は一期的に固定します。
血管の長さが短い場合は、まず精巣を下げられるところまで下げる手術をして、しばらくしてから再手術をして二期的に陰嚢まで下げる場合もあります。
手術はソケイ部を切開して行うのが一般的ですが、腹腔内精巣の場合は最初から腹腔鏡手術をする場合もあります。
 精管端に精巣遺残物(消失精巣)と思われるものがある場合は、これを切除して固定術は行いません。
遊走精巣はすぐには手術は要しませんが、精巣の発育障害があったり、陰嚢内に下降している時間が短い場合は、手術で固定した方が良いと判断される場合があります。

停留精巣の手術時期について

1)出生後の精巣の自然下降について
出生時に停留精巣であっても自然下降する場合があります。
生後3カ月までは下降が見込まれるが、それ以降は下降の可能性はないといわれています。
生後3カ月以降、自然下降を期待して経過観察する意義はほとんどないと考えられています。

2妊ヨウ性について
陰嚢は精巣を冷却する大事な働きをしています。
停留精巣の場合、精巣が陰嚢にないために、精巣の周囲の温度が下がらず、精巣の冷却が十分に行われない環境にあることになります。
冷却の不十分な環境が精巣の発育障害を来すといわれています。
 停留精巣の場合、生後すぐから精巣組織の障害が進行するといわれています。

生後18か月以上では精細胞が消失する症例もあるといわれております。
 妊ヨウ性の観点から、手術は1歳前後、おそくても2歳までは受けるべきだと考えられています。
 成人してからの精液検査では、停留精巣の人の場合、精液所見(精子数、運動率)が不良だといわれています。

精巣固定術を受けた人の方が、受けなかった人より精液の所見が良くなっていたとの報告が多いようです。
 成人して妊娠を希望した場合に、妊娠を成立させるためには、1~2歳までに精巣固定術を受けるのが望ましいと考えられる。

停留精巣の悪性化について

停留精巣では悪性腫瘍が発生しやすいです。
停留精巣は通常の精巣の3~7倍の発生率といわれています。
停留精巣の対側の健常な精巣にも通常の2~3倍の確率で悪性腫瘍が発生しやすいといわれております。
精巣固定術を受けても悪性腫瘍の発生率が低下することはないといわれています。
精巣固定術を受けた後も、悪性腫瘍が発生しないか定期的に観察する必要があります。

まとめ

1)生後すぐに健診を受け、停留精巣がないかチェックしてもらいましょう。
2)停留精巣を指摘されたら、遅くとも2歳までに手術を受けましょう。
3)手術後は、精巣に悪性腫瘍が発生しないか定期的に経過を診てもらいましょう。