女性の尿失禁

尿漏れは中高年女性に多い悩みです。
40歳以上の女性の半数が経験者とも言われています。
治療で治ることも多いです。
一人で悩まないで医療機関を受診してください。

尿失禁の種類

① 腹圧性尿失禁
くしゃみをした時、重いものを持った時、大笑いをした時、坂道を下った時、など腹部に圧力がかかった時につい漏れるタイプの尿失禁
② 切迫性尿失禁
突然、我慢できないような尿意をもよおし(尿意切迫感)、トイレまで我慢できず、尿が漏れてしまうタイプの尿失禁。日中8回以上の頻尿や、夜間1回以上の夜間瀕尿の症状も一緒に認めます。
 これらの症状を来した状態を「過活動膀胱」と呼んでいます。
③ 混合型
腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方の性格を併せ持ったタイプの尿失禁。

腹圧性尿失禁の原因

おなかに強い力(腹圧)がかかった場合、「骨盤底筋」という筋肉が膀胱と尿道を支えることで、尿道が締まり尿漏れを防いでいます。
腹圧性尿失禁では、この骨盤底筋が弱くなったり傷ついたりすることによって、 尿道をうまく締められなくなって、尿漏れを起こします。
加齢や出産、肥満や女性ホルモンの低下が関係しています。

切迫性尿失禁(過活動膀胱)の原因

膀胱が勝手に収縮したり、過敏な動きをするために起きるとされています。
1) 神経系のトラブル
脳卒中などの後遺症で、脳と膀胱の筋肉を結ぶ神経の回路に障害が起きた場合。
2) 骨盤底筋のトラブル
出産や加齢によって、子宮、膀胱、尿道などを支えている骨盤底筋と呼ばれる筋肉が弱くなった場合。
3) それ以外
何らかの原因で膀胱の神経が過敏に働く場合や、原因が特定できない場合。過活動膀胱の多くは、原因が特定できません。

尿失禁の診断

どのような時に漏れるか、尿意切迫感の有無、日中や夜間の頻尿の有無などを問診します。
また排尿の状態を客観的に把握するために排尿日誌を記録してもらうこともあります。
1日の排尿した時間と、そのときの排尿量、尿意切迫感の有無を記録していただきます。
1日の排尿状態や膀胱容量、水分の過剰摂取がないか判断できます。
その他、尿検査や、膀胱の超音波検査をおこない膀胱にほかの病気がないか調べます。

尿失禁の治療

イ)膀胱訓練
切迫性尿失禁の場合におこないます。

トイレに行きたくなってもがまんする訓練です。
尿意を感じてもトイレにいかないで別の事に集中していると、意外と尿意がなくなっていることがあります。
最初は5分くらいから始めて徐々に時間を延ばしていきます。

ロ)骨盤底筋体操
腹圧性尿失禁の治療に行います。
切迫性尿失禁にも有効です。
骨盤の底に張って、骨盤内臓器を支えている骨盤底筋は年齢とともに筋力低下をきた しています。
この骨盤底筋の筋力回復のための訓練です。
方法は「オナラ」をこらえる時の要領で肛門を絞めて5秒数えます。
5秒たってからゆるめます。
この動作を20 回1セットとして1日に数セット行います。
肛門に指をあてて正しく収縮しているか 確認することも大切です。
体操を行なう姿勢は仰向けになって行うのがやりやすいと思われますが、椅子に座ってもできますし、台所にたちながらもできます。

ハ)薬物療法
 A) 切迫尿失禁(過活動膀胱)の場合
抗コリン薬という、膀胱の収縮を抑える作用のある薬を服用します。

この薬は膀胱の 筋肉を弛め、膀胱が勝手に収縮するのをおさえて尿をたくさんためられるようにしま す。
副作用は口の渇き、便秘、物がかすんで見える、めまいなどです。
 B)   腹圧性尿失禁の場合
尿道を引き締める働きのあるベータ遮断薬を用います。

また膀胱の収縮を抑える抗 コリン剤を用いることもあります。
尿道を圧迫する原因となる便秘を改善するため 整腸剤を併用することもあります。

ニ)電気刺激法
骨盤底筋の収縮力を強化したり、膀胱や尿道の神経の働きを調整します。
切迫性尿失禁に有効です。また腹圧性尿失禁にも有効であるといわれています。
一対の電極パッドを腹部と臀部にはって、さらにもう1対のパッドを前者のパッドとクロスするように腹部と臀部に貼って膀胱尿道部で干渉低周波が生ずるようにします。
保険診療で治療できます。
週3回を2週続けその後は2週に1回の割合でつづけます。1回の治療時間は20分前後です。

ホ)手術療法
腹圧性尿失禁の場合に行います。

尿道の裏側で膣壁との間にメッシュテープを通し、 テープを尿道の両側から腹壁の方向に牽引し尿道を固定するTVTと呼ばれる手術をします。
最近ではテープを閉鎖孔に引き出すTOTとよばれる方法も行われています。
手術時間は1時間前後です。
術後、体重管理や適度な運動など生活全般を見直さない と、腹圧尿失禁が再発することがあるといわれています。

まとめ

「年だから仕方がない」なんてあきらめないで、「恥ずかしい」なんてためらわないで、尿失禁について気軽にご相談ください。
治療でよくなることも多いです。