尿路結石が増えています。
食生活の欧米化で尿路結石の患者さんが増えています。10から20歳代の若者の間でも認められるようになりました。
40歳から50歳代の働き盛りの方に最も多く認められます。
男女比は2対1で男性に多いです。日本人で20人のうち一人は一生のうちに1回は尿路結石になるといわれています。
自覚症状は吐き気や冷や汗を伴う激痛を、わき腹、腰部、下腹部に認めます。
男性では睾丸に、女性では外陰部に痛みを感じることがあります。
さらに結石が尿路を傷つけて血尿を認めます。
結石が膀胱にあるときは頻尿や残尿感をみとめます。
結石が尿路の狭いところにはまり込んだときには激痛を認めますが、結石が腎臓の奥のほうに潜んでいる場合は全く症状が現れないこともあります。
症状がないから安心というわけではありません。
結石のために尿路感染をきたし腎盂腎炎で発熱を繰り返したり、敗血症で悪寒戦慄をきたしショックになったりしますので注意が必要です。
まず尿検査で血尿があるかどうかを調べます。
次に超音波検査で結石があるかどうか、また腎臓に変化が及んでいないかどうかを調べます。
次に腎膀胱部単純レントゲン撮影を行いない結石をレントゲン上で確認します。
最後に治療法を決定するために造影剤を静脈注射して排泄性腎盂撮影を行い、結石の位置を確認し、腎臓の機能が低下していないかどうか、尿管が拡張していないかどうかを調べます。
【保存療法】
直径8mm以下の結石は、自然に出てくる可能性があります。
水分をたくさん取っていただき尿管の蠕動運動を亢進させて、かつ尿管の緊張を低下させる薬を内服していただいて治療します。
縄跳びなどで体に震動を与えることも効果があります。
数週間で排石する方もいます。
排石しない場合は別に治療法を選択します。
薬で溶ける結石もあります。尿酸結石やシスチン結石は尿をアルカリにすると溶けます。
尿をアルカリにする薬を数ヶ月内服します。
再発予防のため尿アルカリ剤を内服することが必要です。
この尿アルカリ剤(クエン酸)は食品添加物に指定されており副作用はありません。
【手術療法】
結石が大きくて排石されない場合や、結石のため腎臓の働きが低下しているとき、また尿路感染症のため腎盂腎炎を繰り返す場合には手術療法を選択します。
体外衝撃波結石破砕術(ESWL)といって体の外から衝撃波を結石に当てて砕石する方法をまず行います。
治療は無麻酔で行い約30分で終わります。日帰り手術として行なっている施設もあります。
砕かれた結石は自然に流れて体外に排泄されます。
ESWLで治療できない結石の場合は、内視鏡で直接結石を確認しながら、摘出したり砕いたりします。
内視鏡は経尿道的に挿入する場合がほとんどです。腎結石の場合は経皮的に挿入することがあります。
昔ながらのおなかを切って行う手術は稀にしか行われなくなりました。
結石はカルシュウム、シュウ酸、リン酸、などのミネラルが尿中で過飽和状態となり、腎臓に結晶核ができ、その結晶が成長して結石となります。
シュウ酸カルシュウム結石、リン酸カルシュウム結石、尿酸結石、シスチン結石、燐酸マグネシウムアンモニウム結石などがあります。結石の80%がシュウ酸カルシュウム結石です。
【食生活】 水分をたっぷり 食生活で最も注意したいのは水分の補給。 結石は尿のミネラルが過飽和状態が要因となるので、それを防ぐために水分の摂取は大切です。 尿中のミネラルの濃度を低くするために、1日2リットル以上の尿量を保つようにしましょう。 「夜作られる」といわれる結石の予防には夕食後の水分補給がポイント。 また、汗をかいて尿量が減る夏も勤めて水分を補給するようにしてください。 だからといって、アルコールを大量に飲むのは逆効果です。 ビールにはシュウ酸、さらに尿酸が多量に含まれておりシュウ酸結石や尿酸結石を再発させる可能性があります。 ビール、清酒は控えましょう。焼酎は大丈夫です。 【カルシュウムをしっかり、脂肪は少なめに】 尿路結石の80%はシュウ酸カルシュウム結石です。 尿中のシュウ酸濃度が高くなるとシュウ酸カルシュウム結石ができやすいことがわかっています。 尿中のシュウ酸濃度を減らすためには、腸管からのシュウ酸の吸収を減らせばよいわけです。 カルシュウムをたくさん摂るとシュウ酸の腸管からの吸収が抑えられることがわかってきました。 脂肪をたくさんとると逆にシュウ酸の腸管からの吸収が増えることがわかってきました。 牛乳でしっかりカルシュウムをとり、肉などの脂肪摂取を控えるようにしましょう。 【野菜、海草、青身の魚を適度に】 マグネシウムが豊富な野菜を食べることで結石の形成を抑制することができます。 アルカリ性の野菜は体の酸性化を防ぎ、結石の抑制物質であるクエン酸を作ります。 ただし、野菜ばかりの食生活ではシュウ酸のとりすぎにつながりますから、1食1皿が目安。 大事なことはバランスよく食べることです。 ホウレンソウ、竹の子、ナッツ類はシュウ酸を多量に含んでいますから、茹でるなどの料理の工夫をしたいものです。 また、シュウ酸を多く含む紅茶、コーヒーにはカルシュウムを含むミルクを入れればシュウ酸の吸収が押さえられます。 おひたしに鰹節をかけるのもよい食べ合わせになります。 その他、青身の魚も結石予防に有効といわれますが、これも食べすぎは逆効果です。 イワシやレバー、納豆にはプリン体など尿酸の素も含まれますから、バランスよく食べることが大切です。 【塩分、砂糖は控えめに】 砂糖は尿中カルシュウム濃度を上げ、結石形成に一役かいますから摂りすぎに注意しましょう。 特に、缶入りドリンクは約10%の砂糖とリン酸が含まれています。 摂りすぎには注意しましょう。 塩分も尿中のカルシュウムを増加させるので、摂り過ぎないようにしましょう。 【バランスよく規則正しく】 偏った食生活や過食、運動不足になると結石ができやすくなります。 食事はバランスよく規則ただしくを心がけ、肥満にならないように注意しましょう。 たとえば、朝や昼は軽く済ませて、夕食にしっかり食べると言う不規則な食べ方はよくありません。 夜食べたものが尿中に排泄されて尿中の濃度が高くなり結石ができる好条件になります。 寝る直前の食事もよくありません。 「結石は夜作られる」ことを忘れないでください。 【定期健診】 尿路結石は再発しやすい病気です。 一度、結石にかかると、かかったことのない人の2倍の発生率があるといわれています。 一度、結石にかかったことのある方は半年に1回は再発がないか検査を受けることをお勧めします。 結石が残っている方は予防薬の内服が必要です。 また定期的なレントゲン検査や超音波検査が必要です。 食生活の偏りで血液の尿酸値が上がり尿酸結石ができることはよくあります。 定期的に受診して尿酸値を調べましょう。 血液のカルシュウムや腎機能のチェックも必要です。 血液のカルシュウムを上昇させるホルモン(副甲状腺ホルモン)が異常に増えていて、尿中のカルシュウム濃度が上昇して結石ができる場合があります。 副甲状腺ホルモンのチェックが必要なときもあります。 痛風の治療薬で、尿中に尿酸の排泄を増加させて血中の尿酸値を下げる作用のあるものは、尿酸結石を作りますので、注意が必要です。 |
尿路結石の最大の誘因は食生活です。 高血圧や糖尿病、高脂血症や高尿酸血症などの生活習慣病と同じ誘因で生じます。 生活習慣病の予防対策がそのまま尿路結石の予防対策に当てはまります。 尿路結石の予防もまた、規則正しい食事と適度の運動、そして上手なストレスの発散法にあるようです。 |