①急性単純性膀胱炎 20~30歳代の若い女性に最も多く発症し、閉経前後の中高年の女性にも比較的多い膀胱炎です。 過労、体の冷え、睡眠不足、排尿の我慢、性生活などが誘因となり発症します。 ②慢性複雑性膀胱炎 尿路の何らかの病気(前立腺肥大症、尿路結石、神経因性膀胱、膀胱腫瘍など)が原因で発症する膀胱炎です。 これらの病気を治療しない限り、治りにくく治療は長期化します。 男女の区別なく見られるのが特徴です。 尿路の先天的奇形を有する小児でも発症します。 ③間質性膀胱炎 原因がいまだに不明で治りにくい膀胱炎です。 膀胱鏡でみると膀胱に潰瘍や点状の出血がみられ、膀胱痛が特徴的です。 中高年の女性に多く、男性や若い人でも発症します。治療は膀胱水圧拡張術が有効です 。 |
イ) なぜ女性に多いの?(急性単純性膀胱炎)
膀胱炎は、大腸菌などの細菌が尿道を通って膀胱に入り込むことによって起こります。
女性は男性に比べて尿道が短く、外尿道口が膣や肛門と近いため菌が侵入しやすく膀胱炎がおこりやすいと考えられています。
また細菌の侵入を促進する因子として性生活が関与していると考えられています。
膀胱炎の発症には体調も関係しています。
過労、睡眠不足、かぜ、などで体力が落ちているときに発症しやすくなるので注意が必要です。
ロ) 症状はどのようなものですか?(急性単純性膀胱炎)
急性単純性膀胱炎では、排尿痛、頻尿が主な症状です。
その他には尿混濁血尿、残尿感、下腹部不快感、鈍痛、尿漏れなどもみられます。
通常は発熱はありませんが、38度以上の発熱や悪寒、腰痛がある場合は急性腎盂腎炎が疑われます。
急性腎盂腎炎の場合はより厳密な管理が必要になります。
治療のため入院が必要な場合もあります。
また、比較的似た症状のある病気には、過活動膀胱(OAB)があります。
尿の顕微鏡検査で沈渣に白血球を認めれば膀胱炎の診断がつきます。
白血球を認めなければ、過活動膀胱、その他が考えられます。
膀胱炎の診断には尿の顕微鏡検査は欠かせません。
ハ) 治療はどのようにされるのでしょうか?
治療の基本は、原因となる細菌に対して有効な抗菌薬の服用です。
約1週間きちんと服用しましょう。
また水分を多くとり尿量を増やすことにより、膀胱内の細菌を洗い流しましょう。
また症状の改善のためには下半身の保温も大切です。
香辛料、アルコール、炭酸飲料などの刺激性の食べものや飲み物のとりすぎや、性生活は治療の妨げになりますから、しばらく控えましょう。
ニ) 再発を予防するには?(急性単純性膀胱炎)
女性の膀胱炎では、約4割の方が1年以内に再発したというデータもあります。
これには再感染が原因となる場合と、治療が不完全な場合(不適切な薬剤の使用や服薬日数の不足)があります。
再発防止のためには適切な予防対策を行うとともに、抗菌剤をきちんと服用することが重要になります 。
ホ) 日常生活での予防対策は?(急性単純性膀胱炎)
a) 通気性の良い下着を着用すること。
b) 生理期間中は清潔に保つ。
c) 排尿後は前から後ろに拭く。
d) 排尿を我慢しない。
e) 性交直後は排尿を心がける。
f) 長時間トイレに行けない状態を避ける。
イ) 診断基準(間質性膀胱炎) 間質性膀胱炎は不明な点が多く、症状が不安定で、長期に及ぶことが多いです。 尿の顕微鏡検査では沈渣に白血球を認めないことが多いです。 明確な定義や診断基準はありませんが、臨床的な基準は以下のようになっています。 ⅰ)頻尿、尿意亢進、尿意切迫感、膀胱部不快感、膀胱痛などの症状がある。 ⅱ)膀胱鏡にて膀胱内にハンナー潰瘍、または膀胱水圧拡張後の出血を認める。 ⅲ)上記のⅰ)、ⅱ)の所見を説明できる他の疾患や状態がない。 内視鏡所見以外の検査所見と症状から間質性膀胱炎と診断する目安は、以下の通りです。 以下の項目のうち、いくつかが陽性で、それを説明できる他の疾患や状態 がない場合は、間質性膀胱炎として保存的治療や内服薬などの侵襲性の低い治療を開始します。 ⅰ)抗コリン薬や抗菌薬に反応しない頻尿が3ケ月以上続いている。 ⅱ)膀胱部の不快感や痛みがあり、それらが蓄尿時に増強し、排尿で軽減する。 ⅲ)排尿記録で1回排尿量の平均値が200ml以下である。 ⅳ)膀胱内圧検査で排尿筋過活動がなく、最大膀胱容量が250ml以下である。 ロ) 治療方法(間質性膀胱炎) 保存的療法(間質性膀胱炎) ⅰ)行動療法 定時排尿,飲水コントロール、骨盤庭訓体操、膀胱訓練(排尿を少しづつ我慢する)などです。 ⅱ)緊張緩和 精神的なストレスが間質性膀胱炎の症状を悪化させる要因であることは知られている。 エキササイズや入浴がストレスを減らしQOLに良い影響があるとされている。 ⅲ)食事療法 間質性膀胱炎患者の多くは,酸性飲料、コーヒー、香辛料のきいた食品アルコールなどの食品によって症状 が悪化することがあり、食事療法により症状が改善することが知られている。 <避ける食品> a)水以外の食品 コーヒー、お茶、果物ジュース、炭酸飲料など b)酸性の飲食物 柑橘類をはじめとする果物、酢の物 c)カリウム たまねぎ、きゅうり、しいたけ、熟していないトマト、大豆食品 d)辛み成分 唐辛子、やさび、マスタードなどの調味料。 薬物療法(間質性膀胱炎) ⅰ)内服薬 三環系抗うつ薬アミトリプチリンが症状の改善に有効との報告があります。 ⅱ)膀胱内注入療法 DMSOを生理食塩水または蒸留水で希釈して50%液として膀胱に注入し、10~20分保持します。 週に1回注入し何回か繰り返します。 膀胱水圧拡張術(間質性膀胱炎) 麻酔下に内視鏡で膀胱内を観察しながら、生理食塩水を膀胱に800~1000mL注入し2~5分間保持します。 有効性については50%の方に認められ、有効期間は6ヶ月とされています。 |
まとめ
膀胱炎かなと思ったら尿の顕微鏡検査を受けて、
きちんと診断してもらいましょう。