手湿疹(手荒れ)

手湿疹はよくある疾患ですが、なかなか治りません。放置すると、ヒビ割れをおこしたり、ビランとなり、痛みのため作業ができなくなります。
日頃からきちんと予防し、再発、悪化しないような手当てを心がけましょう。

手湿疹とは

手湿疹は治りにくい皮膚炎です。
水仕事の多い主婦、看護師、調理師、美容師、工場で働く人、紙幣を扱う銀行員、介護のために手を多く使う人、などによくみられます。
原因は患者さんが置かれた環境にあるため、原因の排除が難しく、治癒に導くのが困難です。

手湿疹が発生するメカニズム

正常な皮膚の潤いは、皮膚表面にある皮脂膜や、角質層の角質細胞間脂質(セラミド)、表皮細胞由来の天然保湿因子(ヒアルロン酸)によって保たれています。
 石鹸や、たび重なる手洗いによって皮脂膜が除去され、角質層の配列に乱れが生じ、そこから水分が蒸発し、水分が失われ、皮膚は乾燥します。

その結果、皮膚のバリア機能が損なわれ、外的因子の影響を受けやすくなり、湿疹を生ずることになります。
湿疹は更にビラン、亀裂と進んでいきます。

手湿疹を誘発する因子

化学的刺激:各種石鹸、洗剤、消毒薬、油類、揮発性物質、アルカリ性物質、強酸性物質

物理的刺激:たび重なる手洗い、熱いお湯、濡れることにより生ずる角質層の浸軟、指にかかる摩擦、紙・衣類の接触による皮膚の乾燥

環境因子:室内の乾燥、睡眠不足、ストレス

アレルギ-因子:工場で使用する薬剤や油、台所で使用する金属やゴム手袋、美容院で使用する薬剤など

手湿疹の治療

1:乾燥性の軽度の場合
白色ワセリン、尿素軟膏、あるいはヘパリン類似物質などの保湿外用剤を1日4~5回以上、さらに水仕事のあとに、こまめに塗布します。
 

2:炎症症状を認める中等症以上の場合
ステロイド軟膏を頻繁に塗布します。軟膏は一度にたくさん塗布するのではなく、家事に支障ない程度の少量をこまめに塗布します。トイレに行って手を洗った後も軟膏を塗布するくらいの注意が必要です。軟膏に含有されたステロイドの抗炎症作用の強さより、塗布回数が治療効果に影響します。
夜間、あるいは手を使わないときには、軟膏を塗った後に綿手袋をすると効果が上がります。
治りにくい場合は包帯をし、水仕事を休止してもらうことが必要です。

3:保湿・保護クリームの使用
ステロイド軟こう1日数回塗布します。亜鉛華軟膏を塗布したガーゼで覆うこともあります。ヒビ割れに対してはステロイド含有テープを貼ったり、ストーマ用の皮膚保護シートを貼ったりします。痒みが強ければ抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤を内服してもらうことがあります。重症の場合にはステロイド剤を内服してもらうことがあります。
原因の接触物質が明らかにされたときは、その物質を回避することで完治します。接触物質を明らかにするには、疑わしい物質の皮膚パッチテストをおこないます。

手湿疹をおこさない予防的スキンケア

1:手袋のすすめ
手袋をして寒冷や紫外線から手を保護し、手の乾燥予防に心がけましょう。外出するときや、車を運転するときは手袋を着用しましょう。
 夜間ハンドクリームを使用した後、就寝時に手袋を着用すると手の湿度が保たれ、翌朝には皮膚の潤いが戻っています。

2:手の安静と保護
台所では洗剤は使用濃度を守って使う。まとめ洗いをして手洗いの回数をへらす。あついお湯は使わない、など手に負担をかけないようにしましょう。いつもゴム手袋を着用し、場合によっては綿手袋をした上にゴム手袋を着用すると、直接、水、洗剤に触れずにすみ、手の保護には効果的です。

3:湿潤し重症の場合  
水仕事の前に、撥水性のある保護クリームを使用すると手の保護につながります。保湿剤は水仕事の直後や合間にまめに塗りましょう。普段の手の乾燥を防ぐために保湿剤はまめにぬりましょう。

4:体調管理
手湿疹の誘因として、ストレスや睡眠不足、不摂生、アンバランスな食事など考えられます。普段からの体調管理も大切です。


「手湿疹の治療は、炎症を治める軟膏治療も大切ですが、手を保護するハンドケアが最も大切です。めんどうがらずに手袋を着用し、ハンドクリームをまめに塗りましょう。」