男性不妊症

不妊症とは?

 生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間、性生活を行っているにもかかわらず妊娠が成立しない場合を不妊症と呼んでいます。
期間については1~3年とさまざまな意見があります。
原因として女性側にあるのが4割、男女共にあるのが2割、男性にある場合は2割と言われています。

男性不妊症の診断

  男性不妊症が疑われる時は泌尿器科の診察が不可欠です。
男性性器(精巣,精巣上体、精管、陰茎、前立腺)の診察を行います。
触診や超音波を用いて行います。
性行為が成立しているかもお伺いします。
 精液検査は必ず行います。

必要に応じて男性ホルモン(テストステロン)や、脳下垂体から分泌されて精巣を刺激して造精機能を高めるホルモンFSH、LH、を採血で測定します。

精液検査の方法

  男性不妊症が疑われ場合は、第一に行うのが精液検査です。
検査には新鮮な精液が必要です。
禁欲は2~7日していただきます。
その後自宅でマスターベーションにて採取し、全量を所定の容器に入れて、1時間以内に持参してもらいます。
精子濃度(数)は当院では、精液を白血球数算定用のメランジュールで20倍希釈してNeubauer血球計算盤を用いて顕微鏡下に目視で測定しています。

精液検査の基準値

精液量   2.0ml以上
pH     7.2以上
精液濃度(数) 20×1000000/ml以上
静止正常形態率(奇形率) 15%以上
精子運動率  50%以上
白血球数   1×1000000/ml以下

精液所見の異常

正常精液  精子数が20×1000000/ml以上
乏精子症  精子数が20×1000000/ml未満
無精子症  精子を認めない
精子無力症 前進する精子が50%未満、
         または高速に直進する精子が25%以下
奇形精子症 正常形態精子が30%未満
無精液症  精液を認めないもの

精巣機能障害の分類

① 精巣前性
脳の下垂体という器官から精巣を刺激して造精機能を盛んにさせるホルモン、FSH が分泌されています。

下垂体腫瘍で手術したあとの後遺症としてFSHの分泌が低下して精巣機能低下が生じます。
治療としてはFSHを注射して補充療法をおこない精液所見の改善が期待できます。

② 精巣性
精巣そのものの働きが低下している状態です。

成人になってから「おたふく風邪」にかかった人、もともと染色体異常がある人(普通の男性よりX染色体が多いクラインフェルター症候群)、精索静脈瘤のあるひと、等の場合です。
精索静脈瘤は手術で結紮することで精液の所見の改善が期待できます。
仮に無精子症であっても最近の生殖医療の進歩はめざましく、精巣内にある精子を顕微鏡下に採取しその精子を顕微鏡下に卵子に注入し顕微授精ができるようになりました。

③ 精巣後性
精巣で精子は造られているのですが、精子の通り道(精管、精巣上体、前立腺等)か詰まって精子が出てこれない状態です。

先天性の精管欠損、ソケイヘルニアの手術で両側精管が結紮された場合、両側精巣上体炎、パイプカット後などの場合です。
精巣内には健常な精子がおり、精管再建術で健常な精液が得られます。
再建術でも健常な精液が得られない場合は、精巣から精子を採取して顕微授精をする場合もあります。

④明らかな異常のない精巣機能障害
精巣前性,精巣性、精巣後性の異常がなく原因不明の精巣機能障害を 特発性造精機能障害と呼んでいます。

男性不妊症の6割を占めます。
男性不妊症の35%は乏精子症といわれています。
また精子濃度(数)が正常でも 精子の運動率が悪かったり、奇形率が高くて不妊となっている人も35%いるとい われています。
このような方には精巣機能の改善に効果があると考えられ、副作 用の少ない内服薬を投与します。
また亜鉛やセレンは精巣機能維持には重要であ ると言われており、亜鉛やセレンを含む食品の摂取が勧められます。
亜鉛を多く含む食物は、牡蠣、イワシ、ニシン、ハマグリ、アサリ、まめ、納豆 ニボシ、玄米、きな粉、いりゴマ、干しシイタケ、切り干し大根、などです。
セレンは小麦や穀物に多く含まれています。

まとめ

当院では精液検査をしております。
結果は持参して いただいた日に報告しています。