性感染症

性感染症が流行しています

性感染症とは

性行為を介して感染する疾患の総称です。
男性では淋菌やクラミジアが原因で起こる尿道炎、ウイルスが原因でおこる性器ヘルペスや尖圭コンジローム、その他、ケジラミや梅毒などがあります。
さらに患者数は少ないですがエイズも性感染症のひとつです。

尿道炎

男性の性感染症の80%以上が尿道炎です。
尿道炎の大部分は淋菌とクラミジアが原因となります。
同時に両方にかかる場合もあります。


【感染経路】
淋菌やクラミジアがいる場所は性器だけではありません。
咽頭にも菌は存在しオーラルセックスによって感染します。
特に淋菌性尿道炎では、近年オーラルセックスによる感染頻度が増加しており、大きな問題となっています。

【症状】
排尿痛、尿道分泌物、尿道のかゆみ、外尿道口の発赤などを認めます。

【相手が一般女性でも感染の危険性は同じ】  
女性はクラミジアに感染してもほとんど症状が出ないため、一般女性の間にもクラミジアは浸透しています。
十代女性の25%がクラミジアに感染しているというデータもあります。
一般女性だから安心ということはありません。

【淋菌性尿道炎とクラミジア尿道炎の比較】  
淋菌性尿道炎の場合は、感染経路は性風俗女性に多い。
オーラルセックスによる感染が増加している。
発症時期は感染から4日後で、症状は強い。
クラミジア尿道炎の場合は性風俗女性からの感染は減少し、一般女性からの感染が増加している。
発症時期は感染から10日前後で、症状は軽い。

早期診断、早期治療が原則

淋菌性尿道炎、クラミジア尿道炎は、早期診断、早期治療で確実に治る病気です。

【検査と治療】
尿から淋菌とクラミジアの両方を同時に検査することができます。
原因菌が判れば抗生物質を投与し、治療を行います。
しかし、放置すると、感染が進行しほかの臓器に広がることがあります。
女性では卵管炎や腹膜炎になることがあります。
男性では前立腺炎、精管炎、副睾丸炎になることがあります。
将来、男性不妊症になる可能性もあります。

【注意】
感染が判った場合は、かならずパートナーも一緒に治療しましょう。
どちらかが感染している限りピンポン感染を繰り返すことになります。
さらに、淋菌とクラミジア感染は、女性の不妊症の原因となります。
感染しても簡単に治るからと安易に考えてはなりません。
セックスで感染する病気は淋菌やクラミジアだけではなくてエイズもあります。
とにかく感染しないことが一番です。
症状がなくなったからといて、薬の服用を自分で中止しないでください。
必ず再診して、菌が消えているか、確認の検査を受けてください。
治療終了後は感染予防のためコンドームは必ず使用してください。

尖圭ゴンジローム

【症状】
性交渉後2から3ヵ月後に亀頭、陰茎にできるイボです。
陰唇や肛門の周りにも出来ます。
米粒大の小さなものから数センチの大きなものまで色々で、多発します。
乳頭状、鶏冠、カリフラワー様の形をとります。
放置すると巨大に増殖することがあります。

【病因】
直接接触した亀頭、陰茎ないし肛周、膣の小外傷からヒト乳頭腫ウイルスが侵入し表皮細胞に感染し、表皮細胞が異常増殖してイボを形成します。

【治療】
イミキモドクリームの塗布や、液体窒素を用いた冷凍凝固を行います。

ケジラミ

【症状】
性交渉の1週から1ヵ月後に陰毛部に激しいかゆみを認めます。
毛根に大きさ1ミリの動く虫を認めることがあります。
陰毛に付着した白くてやや透明な砂の大きさの卵をみとめます。
皮膚には発疹などの症状は起きません。

【病因】
性交渉で伝染したケジラミが産卵し、孵化した幼虫が陰毛の根元で吸血し、アレルギー反応を起こし激しいかゆみを生じます。

【診断】
毛に付着する虫体や卵を顕微鏡で確認します。

【治療】
スミスリンパウダーを三日に一回、患部に散布します。
卵には効かないので数回の散布が必要です。
パートナーの治療も必要です。

性器ヘルペス

【症状】
性交渉の2から10日後に、男性では亀頭や包皮に、女性では陰唇や会陰部に水疱を生じ潰瘍となって激痛を生じます。
ソケイリンパ節の有痛性の腫れも認めます。
放置すると重症化したり、全身に水庖ができたりします。

【病因】
ウイルスが性器粘膜や皮膚の傷から侵入し皮膚細胞内で増殖し水疱を形成します。
ウイルスは神経を伝わって脊髄の神経節に至りそこで不活化状態で住み着きます。
風邪やストレスで活性化され皮膚に症状を起こして再発することがあります。

【治療】
感染の初期から抗ウイルス剤の内服、注射、軟膏塗布などを行うことが必要です。

【無症候性ウイルス排泄】    
性器ヘルペスに感染していると、無症状でも2%の方で男性尿道口や女性の肛門周囲にウイルスが排泄されているといわれています。
性器ヘルペスの症状がなくてもパートナーに感染させる可能性があります。

【再発抑制療法】    
性器ヘルペスは1年に数回再発します。
再発を抑えるために抗ウイルス薬を予防的に内服する治療法が2006年9月から保険診療で出来るようになりました。
ウイルスは脊髄に住み着いているので根絶は出来ませんが再発の頻度を少なく出来ます。
性器ヘルペスに感染した妊婦が分娩した場合、胎児に産道感染が生じ、新生児ヘルペスとなることが知られています。
新生児ヘルペスは重篤で死亡率も高いといわれています。
妊娠や出産を控えた女性にとっては、性器ヘルペスの再発抑制は大切な課題だといえます。

梅毒

【症状】
性交渉の3週後に、菌の進入箇所である亀頭に1から2センチの硬いシコリができます。
これは次第に潰瘍化します。
同時にソケイリンパ節の無痛性の腫れが認められます。
これらの症状は無痛性で自然に消失します。
感染3カ月後には自覚症状を伴わない多彩な皮疹が生じます。
1から2センチの淡い紅斑が全身や手のひらに多発します。
肛門周囲にイボが生じます。
感染3年後には顔面や全身に皮下結節が生じます。
感染から10年たつと皮疹は認められず血管や神経の症状が出てきます。
大動脈瘤、脊髄障害のよる神経麻痺が生じます。

【病因】
スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマの接触感染による、血清梅毒反応は感染後3から4週後に陽性となります。
感染直後では陰性になりますので注意が必要です。

【治療】
ペニシリンの注射や内服を行います。
投与の目安は梅毒トレポネーマを殺すことであり、血清梅毒反応を陰転化することではありません。
数週間の投与で完了します。

エイズ

日本では2005年の1年間で新たに1199人のHIV感染者、エイズ発症者が確認されています。
山形県でも数名の感染者が確認されています。
年々増加し身近な病気になりつつあります

【症状】
性交渉によりHIV感染後3から6週の間に、発熱、関節痛、全身倦怠感などの一過性の症状が見られるが、自然に軽快します。
その後5年から10年にわたる無症状の期間があり、その間ウイルスが増殖しエイズ発症にいたります。
血液の中のリンパ球が障害され、感染症や腫瘍が発生し、生命が危険にさらされます。

【診断】
採血でHIV抗体検査を行います。
感染後、抗体ができるまでは6から8週間かかります。
その期間に検査して陰性だとしても感染していないとはいえません。
感染が疑われてから8週以上立ってから検査を受けて陰性でないと感染していないとは断定できません。
陽性と出た場合は偽陽性がないか確認の検査が必要です。

【治療】
有効な薬が開発されています。
多剤併用療法で治療効果が上がっており、不治の病ではなくなりつつあります。
早期に診断し、早期に治療することが治療効果の改善につながります。