前立腺癌

年々増加している前立腺癌。 早く発見して治療すれば決して怖い病気ではありません。自分の体は自分で守る。50歳になったら前立腺癌検診を受けましょう。PSA検査(採血)するだけで判定できます。

前立腺癌検診とは?

採血で前立腺特異抗原(PSA)を測定します。
PSAとは前立腺で作られるタンパク質分解酵素のことで、癌があると増えてきます。
測定結果が4.0以下であれば癌の心配はありません。
4.0以上であれば癌の可能性が少しあります。10以上であれば癌の可能性が高くなります。
直腸に指を入れて前立腺を触診します。
また超音波検査で前立腺を観察します。
これらの検査では確定診断にはいたりません。
確定診断のためには前立腺に針を刺して組織を採取して病理検査が必要です。

前立腺生検とは

肛門、又は会陰部(肛門と陰嚢の間の部分)から針を前立腺に刺して組織を採取します。
一般的には6から8箇所から採取します。
30箇所から採取する施設もあります。
検査は痛みを伴うので麻酔をする事が多いようです。
血尿、肛門出血、尿閉、発熱をきたす場合があり、入院して検査をすることが多いようです。
採取した組織はすべて病理検査をします。

癌が見つかったら進行度を調べます

病理検査では癌の悪性度を調べます。
グリーソンスコアーといって数字で表します。
6以下がおとなしい癌、7以上が危険な癌と考えられています。
病気の進み具合を調べるために超音波検査、CT検査、MRI検査、骨シンチグラフィーをこない、癌が前立腺内にとどまっているのか、前立腺の外まで広がっているのかを判定します。
リンパ節や骨に転移がないかを調べます。

治療法を選択します

年齢、進行度、病理検査の悪性度、個人の生活スタイル、個人の希望などを総合的に考え合わせて治療法を決めます。
前立腺癌は初期の段階で発見されればどのような治療を選んでも十分にコントロール可能です。
5年生存率はほぼ100%、10年生存率は80%以上を期待できます。
また色んな治療を組み合わせて治療効果を上げることができます。
進行した段階で発見されれば治療法は限られ、5年生存率は50%以下となります。

手術療法

60歳代から70歳の前半の若い方で、病変が前立腺内にとどまっている方に適しています。
前立腺を全摘出します。
術中出血することもあり、合併症のある方には不向きです。癌を根治することが期待できます。
根治した場合は術後の補助療法はまったく必要がありません。
術後に勃起不全になり性機能障害をきたすことが多いようです。
また尿失禁となり生活の質が低下する場合もあります。再発することがまれにあります。
再発したときは、内分泌療法や放射線療法を追加します。
前立腺を全摘出した場合、再発しても明らかな病変が生ずるまで平均8年かかり、死亡するまでは 平均5年かかるという報告があります。

内分泌療法

ホルモン療法と呼ばれています。
前立腺癌は、男性ホルモンの作用で増殖します。
男性ホルモンを除去して女性ホルモンを投与すると前立腺癌は退縮します。
男性ホルモンを除去するために以前は睾丸摘出を行っていました。
最近ではLH-RHアナログという注射を1から3ヶ月ごとに行い、睾丸からの男性ホルモンの分泌を抑制します。また抗男性ホルモン剤といって男性ホルモンの作用を抑える薬を内服します。
病変が前立腺にとどまっている初期の段階でホルモン療法を受けた患者さんの生存率は、一般人口の期待生存率と差がないと言われています。
欠点としては薬代としての治療費がかかります。
また性欲減退、勃起不全、女性化乳房、ほてりなどの副作用があります。
ホルモン療法が効かなくなって再燃する方が2から3割認められます。
再燃した場合は放射線治療や抗がん剤を使った化学療法をすることがあります。

放射線療法

従来は、体外照射で前立腺に放射線を照射していました。
皮膚や前立腺の奥にある直腸に障害をきたす可能性がありました。
最近、小線源を前立腺に埋め込み組織内照射する方法が開発されました。
方法は前立腺生検と同じように前立腺に会陰部から針を刺して小線源のチップを数十個埋め込みます。
治療効果の向上と副作用の軽減が期待されます。
アメリカでは前立腺全摘出術と同様の頻度で治療が行われるまで普及しています。
治療成績も前立腺全摘出術と遜色のないものとなっています。
日本では2006年10月の段階で全国60の施設で実施しています。
75歳以上で手術が不向きな方に適しています。

化学療法

抗がん剤の治療です。
骨やリンパ節に転移した場合におこないます。
前立腺癌に特効薬はありません。
新薬で有効性の期待されるものも出てきました。
何種類かの薬を組み合わせて使います。

無治療

他の病気で死亡した50歳以上の方を解剖すると20~30%の方に前立腺癌を認めるという報告があります。
ある前立腺癌は人体に癌として悪影響をあたえず健康にも害を及ぼさず存在していることがあるということを示しています。
このような癌を 偶発癌とよびます。
見つかった癌が偶発癌であれば積極的な治療はせず経過観察だけの選択肢もあります。


どのような治療を選択しても癌が再燃、増殖してこないか監視が必要です。
PSA検査(採血)を定期的に受けてください。