夜間に排尿のために何回も起きることは、精神的にも身体的にも大変な苦痛です。 睡眠障害になったり、転倒して骨折することも多いといわれています。 背景因子として高血圧、糖尿病、脳血管障害をもっている人に多く見られます。 夜間の排尿回数が3回以上の人はそうでない人と比べて寿命が短いといわれています。 |
夜間頻尿とは夜に1回以上排尿する場合と定義されています。
若人では10~30%の人に認めますが、高齢者では40~80%の人に認められ、60歳を過ぎると急に増加します。 70歳を過ぎると夜間排尿が2~3回の人が半数以上になります。
男女ともに発生頻度に変わりはないといわれています。
加齢による影響が考えられます。 前立腺肥大症や過活動膀胱、神経因性膀胱が加齢とともに増加し、夜間頻尿の原因となります。 高血圧の場合は、カテコールアミンの分泌増加により日中の腎血流が低下し尿の生成が低下し、日中は体液が貯留されます。 ところが夜間になるとカテコールアミンの分泌が低下し、腎血流が相対的に増加し尿の生成が増加します。 そして夜間の尿量の増加(夜間多尿)となり夜間頻尿の原因となります。 心疾患のある人は、心臓のポンプ機能が低下し、日中に体液が貯留し、夜間に尿となって排泄される傾向となり、夜間頻尿となります。 |
一日の排尿を記録します。 排尿した時間と排尿量を記録します(尿量は計量カップや目盛りのついた折り畳みできるビニール製の簡易コップを使い測定します)。 またその時に尿意切迫感や尿失禁がなかったかも記録します。 水分、お茶、牛乳などを摂取した時は、その量も記録します。 原則として1週間記録していただいていますが、外出などで記録が無理な場合は、できる範囲で記録してもらっています。 排尿日誌をつけることにより、一日の排尿回数、夜間の排尿回数、一日の尿量、一回の排尿量がわかります。 水分の過剰摂取(多飲)がないかどうか、過活動膀胱がないかも判断できます。 |
脳血栓予防のため就寝前に水分をたくさん飲む習慣の人がたくさんいます。
脱水防止のためある程度の水分摂取は必要ですが、夜間頻尿になるほど飲む必要はありません。
水分を多く取れば多く取ったほど脳血栓が予防できるという根拠は示されていません。
一日1500~2000ccの排尿があれば十分な水分摂取量と考えられます。
水分の過剰摂取による夜間頻尿がないかは排尿日誌をつけることでよくわかります。
1)排尿日誌から水分の過剰摂取がないか判断します。過剰摂取があればこれを是正します。コーヒー、お茶、アルコールの摂取をひかえたり、夕食後の水分を制限します。
2)前立腺肥大症がある場合は、前立腺治療薬であるアルファーワンブロッカーを投与します。夜間頻尿はある程度改善しますが、完全には消失しないこともあります。この場合には膀胱の収縮を抑制する抗コリン薬を併用することがあります。
3)過活動膀胱を認める場合には、抗コリン薬を投与します。
4)高血圧の場合は、日中の体液貯留のため夜間頻尿となります。早朝高血圧があると早朝にカテコールアミンが分泌し、膀胱の知覚が過敏になり尿意を催しやすくなり早朝頻尿となります。以上のように高血圧は夜間頻尿、早朝頻尿の原因となりますので、降圧剤での管理が必要です。降圧剤のCa拮抗剤は利尿作用があるので夜には服用しないほうがよいでしょう。
5)夜間多尿で、潜在性心不全のため浮腫や体液貯留が認められる場合は,就寝の8時間前に利尿剤(フロセミド)を内服します。就寝前までに体内に貯留した水分を排泄して、夜間に排泄する尿を減少させます。夜間頻尿は明らかに改善されます。
6)夜間多尿で、潜在性心不全がない場合は、就寝前に抗利尿ホルモンを点鼻することにより夜間の尿量が減少して夜間頻尿が改善します。
まとめ
夜間頻尿でお悩みの方は、水分を取りすぎていないかチェックしてみましょう。