慢性前立腺炎

こんな症状はありませんか。
〇排尿時や射精時に痛みや不快感を感じる
〇陰嚢と肛門の間に何となく不快感がる。
〇睾丸やペニスに不快感がある
〇下腹部、恥骨部ないし膀胱部に不快感がある
〇ソケイ部、大腿内側部の不快感や疼痛がある。
〇尿道の違和感や持続痛がある。
以上のような症状があるときは、慢性前立腺炎の可能性があります。

Ⅰ:慢性前立腺炎の診断方法

直腸診

肛門に指を挿入して、肛門の直上で腹側に位置する前立腺を触診します。
前立腺に圧痛や疼痛がないか、また硬結がないか調べます。
また腫れや浮球感がないかも診察します。
前立腺のまわりにある外括約筋の緊張の度合いも調べます。
これらの所見が認められるときは慢性前立腺炎を強く疑います。
前立腺癌の可能性を否定するためにPSA(前立腺特異抗原)を調べることがあります。

前立腺マッサージ後の尿検査

前立腺をマッサージした後、尿を顕微鏡で検査し、白血球の数や有無、細菌の有無を調べます。
前立腺マッサージの前に採尿した尿所見と比較し、白血球が増えていないか観察します。

前立腺マッサージ後の尿で、白血球数の増加を認めかつ細菌を認めるときは、

慢性細菌性前立腺炎と診断します。

前立腺マッサージ後の尿で、白血球数の増加は認めるが、細菌を認めない場合は、炎症性慢性骨盤内疼痛症候群と診断します。

前立腺マッサージ後尿で、白血球をも細菌も認めない場合は、非炎症性慢性骨盤内疼痛症候群と診断します。

Ⅱ:慢性前立腺炎の原因

慢性細菌性前立腺炎

原因となる菌では大腸菌が多いですが、他の細菌が検出されることがあります。
炎症性、非炎症性慢性骨盤内疼痛症候群

原因不明のものが多いですが、通常の検査では見つかりにくい菌(クラミジアやマイコプラズマ)が原因になることもあります(炎症性)。

前立腺肥大症による排尿困難、骨盤底筋の過緊張、骨盤内のうっ血、冷えやアレルギーなどさまざまな原因が考えられ、更に精神的な要因も加わることがあります。
男性更年期障害も原因のひとつと考えられます(炎症性、非炎症性)。

いずれにせよ、体力の消耗時(ストレス、不眠、過度の飲酒)や長時間いすに座っている人(長距離ドライバー、デスクワークの人など)がかかりやすいともいわれています

Ⅲ:慢性前立腺炎の治療

慢性細菌性前立腺炎

内服薬による抗菌薬治療を4~6週間続けます。

炎症性慢性骨盤内疼痛症候群

細菌性の可能性も残されていることから、まず2~4週間、抗菌薬の治療を行います。
また前立腺に存在する細菌を洗い流すため水分を多くとりましょう。
飲酒を避けるなどセルフケアも大切です。

非炎症性慢性骨盤内疼痛症候群

原因を考慮し、それぞれに適した治療法が選択されます。

排尿障害を認めるタイプ
前立腺肥大症がある場合はその治療薬を投与します。
膀胱頸部硬化症を認める場合は膀胱頸部切開術をすることがあります。

骨盤内うっ血を認めるタイプ
うっ血を解除する効果のある漢方薬を使用します。
血の巡りをよくするために前立腺のマッサージがおこなわれます。
また適度な運動や骨盤を冷やさない工夫も必要です。

骨盤底筋の過緊張を認めるタイプ
干渉低周波で治療する場合があります。非選択性のアルファ遮断剤を用いる場合があります。

心因性のタイプ
カウンセリングをします。
抗うつ薬を投与することがあります。
心療内科医に紹介することがあります。

原因不明
すべてのタイプにあてはまらないか、すべてのタイプが混在している状態。
男性更年期障害が含まれていることが多いかもしれません。
男性更年期障害が疑われれば、男性ホルモン補充療法を含めた治療を考慮します。

Ⅳ:日常生活での一般的注意事項

悪化因子

飲酒、過労、緊張、冷え、長期座位、刺激物の多量摂取、射精不足、熱い風呂、慢性的な骨盤底への物理的刺激(トラック、タクシーのドライバーや自転車通勤者)などがあげられます。
これらを意識的に回避するだけで自覚症状はかなり改善します。

改善因子

水分の多量摂取、整腸、温座浴、軽い運動(特に下肢の運動は全体の血行改善をもたらし有効で、walkingは推奨されます)、また期間をあけないで射精する、などを行えば改善効果が期待できます。


慢性前立腺炎は、治りにくい病気ですが、命に関わるようなことはありません。
あせらずリラックスして治療しましょう。